立場ごとの違い(下)
前々回からの続きです。
あらゆる状況を踏まえ、当初の方針通り「和解交渉」一本に絞ることにしました。
マンガならこうした場合、主人公が何かウルトラC、例えば、相手方の弱みを刑事ドラマさながらに暴き出し、「負けたぜ。もう、回収は諦めよう…。」で落ちがつくのでしょうが、実務がそう甘い筈がなく、ただ現実を見、手持ちの材料で対応するのみです。
仮に訴訟手続で対応するなら、仮差押には不服申立をし、訴訟で争う手段が「手続上は」存在します。が、時間と費用の無駄。お金を借りた事に間違いはなく、債権保全の必要性も明白ですから。第一、争う姿勢を見せた途端に和解の可能性は消滅します。
後は幾度となく、先方の担当者と話をしました。最初こそ「判決を取り、(売掛金に)強制執行します。交渉の継続は無意味ですよ。」と、全く硬い対応でしたが、それでも決裂だけは避けつつ話し合いを続けるうち、敵対関係にも関わらず何故か、ある種の人間関係(馴れ合うという意味ではなく)が形成され、次第に先方の態度が和らいできました。
結局、相互に着地点が見出せたので和解をし、仮差押と訴訟は取下げられたのですが、そこまでの過程で、先方が自発的に『もっといい話をしましょう。これ以後、利息は払わなくて結構ですよ。』と、当方の歩み寄りに応じる形で期待以上の譲歩をしてくれた事が印象に残っています。
和解書調印後の雑談の中で、(何故ここまでするのか?)という私の疑問も解消されました。資料からは見えない「感情面」での行き違いが随分とあったようで、貸し手・借り手という立場ごとの違いを「超える」紛争を解決することの困難さを知りました。
もし「目には目を」で応じていたら…、とつい思い返してしまう事案です。
| 固定リンク
「司法書士事件簿」カテゴリの記事
- 時効完成後の債務承認(下)(2006.10.02)
- 時効完成後の債務承認(上)(2006.09.22)
- 立場ごとの違い(下)(2006.07.23)
- 立場ごとの違い(中)(2006.07.18)
- 立場ごとの違い(上)(2006.07.14)
コメント