企業法務4 新しい事業体① LLP

自宅の引越し etc.で、計らずも少し更新をサボってしまいました…。恐縮。

気を取り直して、企業法務シリーズ第4回 ‐ 新しい事業体① LLPについて ‐ です。2月6日のブログでもサラッと触れていますので、あわせてお読み下さい。

さて、今回触れるLLP(Limited Liability Partnership)とは、「有限責任事業組合」のことを言い、昨年8月、経済産業省主導のもとで新設された事業形態です。LLPとの対比で、LLC(Limited Liability Company)がよく挙げられますが、LLCは近く施行される会社法で新設される合同会社のことを指します。こちらについては後日書く予定です。

LLPは、主に次のような特色があります。

1.構成員(=組合員)は有限責任

2.内部自治原則

3.構成員課税(パススルー課税)

4.法人格はないが、組合契約が効力発生している旨の登記が可能

特に、株式会社との比較面で2の「内部自治」に注目したいですね。内部自治とは、簡単に言えば「自分たちのことは自分たちで決める」という概念です。例えば、組合が利益を上げた場合にどう配分するか?etc.を組合契約に定めることで、原則として自由に決めることができるのです。利益配当は出資割合で分配するしかない株式会社と比べ、それ以外の部分、例えば組合員ごとの貢献度を考慮できる点で相当の柔軟性がありますので、共同事業体としてはある意味一番優れた形態だと考えられます。

しかし、こうした「自由」のメリットを十分に享受するには、強い信頼関係が大前提です。何らかの理由で関係が破綻した場合や、一部の組合員が脱退する場合などを事前に想定しなければ、後々のトラブルのもとになりかねません。ですので、共同事業を興すにあたってLLPを選択する場合は、株式会社など他の事業形態も十分に吟味した上で決定する方が良い、と私は思います。

『作るのは簡単・潰すのは難しい』 これがLLPです。

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企業法務3 正しい会社の作り方②

今日は、企業法務シリーズ第3回 ‐ 会社法での株式会社の作り方 ②‐ です。

前回に続き、会社法での株式会社設立についてです。

3.類似商号規制の廃止 

 商法では、同じ市町村で同業他社とソックリな社名は登記できないとされており、例えば、同業の「エービーシー」社が既にある町で、新たに同業の「ABC」社を設立する場合がこれに該当します。

 会社法では、この規制が撤廃されました。ここで間違えやすいのは、ソックリ社名でも「登記はできる」とされただけで、無制限に社名を決めて良い訳ではないのです。後発の会社が「ABC」の名前で登記できたとしても、そうしたソックリ社名の使用が不正の目的によるものと考えられる場合、既存の「エービーシー」社は、営業上の利益の侵害だ!として、ABC社に対して侵害の停止または予防を求めることができますし、場合によっては不正競争防止法の適用もあり得ます。ですから、やはり事前にしっかり調査しましょう。

4.現物出資規制の緩和

 現物出資とは、会社への出資を金銭でなく、不動産・動産・債権などで行うことを指しますが、このための規制が若干緩やかになりました。

 現物出資をする際には、主にその財産の価値について、裁判所が選任する検査役の調査を受けることが原則です。なぜこのような規制があるかと言えば、例えばAさんが会社の設立に際して100万円相当の株式を引き受けるにあたり、10万円程度の中古車を「100万円の価値がある!」として言い値で出資できるとすれば、その差額90万円について会社が損をする結果になりますし、また、他のBさんが現金で出資した場合、A・Bさんの間に不公平が生じてしまいます。これを防ぐための規制なのです。

 ただ、全ての場合に検査役の調査が必要でなく、例外があります。①現物出資の総額が500万円以下のとき(額が少ないので) ②市場価格のある有価証券であるとき(客観的に価格がわかるので)③弁護士など一定の専門家の証明を受けたとき(価格が相当であることが担保されるので)の3つです。

 商法では、例外①について「500万円以下かつ資本の5分の1以下」としていたのですが、会社法では後の「資本の5分の1以下」の部分が削除されています。これにより、現物出資の総額が500万円以下という条件さえクリアすれば、現金50%・現物50%の出資も法律上、検査役調査なくして認められるのですが、前回書いたとおり、(現金という意味での)資本金には十分な余裕を持って創業して欲しいですね。

〈規制がないからやっても良い〉ことと〈実際に出来る〉ことを混同してはならない、と私はつねづね思っています。規制緩和を裏返せば、自己責任増大と言えるのかも知れませんね。

次回は、企業法務シリーズ第4回 ‐ 新しい事業体① LLPについて ‐ です。

 

 

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企業法務2 正しい会社の作り方①

今日は、企業法務シリーズ第2回 ‐ 会社法での株式会社の作り方 ①‐ です。

会社法が施行されると、迅速・簡単に株式会社を設立できるようになります。

1.最低資本金制度が廃止されます 

 商法では、設立に際して1000万円相当の財産を資本として出資する必要がありますが、会社法ではこの制度は廃止され、資本金1円でも設立できるようになります。

 と、このように書いてしまうと、(資本金がいらなくなるのか?)と誤解されそうですが、少し違うと思います。法律上の規制がなくなったとはいえ、起業には実際問題として元手が必要です。最初の仕入代金を支払ったら資本金が底をついた、では経営が成り立ちませんからね。やはり、設立時の資本金にはある程度の余裕を持ちたいものです。

2.発起設立時の保管証明書が不要になります 

 商法では、金銭による出資の場合、金融機関に手数料を支払って出資金の保管事務を委託し、「保管証明書」の交付を受けてはじめて会社設立登記が可能でしたが、会社法では、発起設立(発起人のみで出資し、株主は募らない方法)の場合に限って、この手続きを踏むか否かを選択できます。そして、保管事務の委託を選択しない場合には、取引明細書や預金通帳写しなどを用いて上の保管証明書に代えることができるようになりました。

 これにより、手数料と手間が節減できることはもちろん、ここでは特に、入出金の自由度が高まることに着目したいと思います。というのは、金融機関に保管事務を委託すると、出金するには設立登記の完了を待たなければなりません。私の地元である大阪の場合、登記の完了まで概ね1週間かかりますので、その間は資金の回転が止まってしまい、たいへん不都合を生じるケースがあります。今後は例えば、あらかじめオフィスの権利金を支払う必要がある場合でも、サッと出金して支払い、スムーズに事業を開始することができるようになる訳です。

次回は、企業法務シリーズ第3回 ‐ 会社法での株式会社の作り方 ②‐ です。

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企業法務1 会社法施行を前に

いよいよ、会社法の施行が迫ってきました。

これまでの企業のあり方に著しい変化をもたらすことはご存知のとおりですが、私たち司法書士は、従来から企業法務と、その仕上げとして商業登記を業とする専門職として、起業家・経営者の判断の一助となるような対応を考えなければなりません。

そこで、研究のまとめを兼ねて、随時、カテゴリ別に特集記事を書いていきます。

今日は企業法務特集1 『会社法施行を前に』 です。

既に多数の書籍で紹介されているこの「会社法」ですが、研究に際して実務家が意識しなければならないのは、当然「実務への当て嵌め」が第一だと私は考えています。

例えば、最近某IT会社関連で話題になった「100分割」。その是非は措くとして、これは現行商法上「株式分割」の制度がベースとなっていますが、新会社法下における株式分割を研究するにあたっては「どういう手続で分割するのか?」ではなく『どのような局面で分割するべきか?』を先に考えなければならない、と思うのです。前者はペーパーテストの対策、後者は実務家の対応、と言えるでしょう。せっかく学び得た方程式も、実際に使わない限り、単なる知識としてお蔵入りしてしまうことと同じです。

では、具体的にどうするか?

例えば、よくある事例、これから頻出が予想される事例を設け、会社法下ではどうするか検討を試みるなど、シュミレーション的な手法を取り入れるのも一案でしょうか。新制度がスタートする場合、実務の動向を見ながら進めるべき場面は確かに存在しますが、それでも細かな手続の部分や登記のことは、後からでも補うことができますからね。

上の考えに基づいて、次回は企業法務特集2 『株式会社の作り方』 です。

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