時効完成後の債務承認(下)

― 前回の続きです。

こうして、消滅時効(本件では商事債権として5年:商法522条)にかかった債権について私が検討したのは、①支払った後でも消滅時効を主張できるか? ②振り込んでしまったお金を取り戻せるか? の二点でした。

ちょっと理屈っぽい話になりますが、まず、①について。

「支払った」ことを外形的に見れば、これは「債務の承認」にあたり、その後の消滅時効の主張は信義則に反し許されない、とされそうです(民法147条・判例)。大ざっぱに言えば「あなた、借金がまだあると思っていたから返したんでしょ?後で『あれは時効だ』なんて話は通りませんよ!」という反論が一応は予想されるのです。しかし本件では「脅されて仕方なく支払っただけで、債務を承認した訳では決してない」と構成して、少々強引ながらも消滅時効を主張することにしました。

次に、②について。

「脅した行為は強迫に該当する」と構成して支払いの取消を主張(民法96条)した上で、お金の返還を求めました。

これらの主張をまとめ、相手方に内容証明で受任通知を発送。さて、どうなることやら?

…配達証明が届く前に、相手方から「返す」との電話がありました。主張が通ったのか、刑事告訴の可能性を示唆したためかの判断はつきませんが。

別件でも時効消滅による債務不存在の和解ができ、結果はめでたしでした。

タマにこうしたテーマで書くと、漢字が多くなってしまうのが悩ましいです。

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時効完成後の債務承認(上)

消滅時効の完成が間近か、または経過している貸金債権を安く買い集め、債務者を探し出して取り立てるケースが頻発しているようです。

貸金元本こそ少ないながら、5~10年分の遅延損害金が加算されているので、請求額は結構な額になります。これは違法か?と問われれば、事案によりけりで必ずしもそうは言い切れないのでしょうが、明らかに問題なのは取立の方法にあるようで…。

「借りたものは返さんかい!職場を知ってる。取り立てに行くぞ!」 と凄む。

「給料差押えるぞ!!」 と連呼する(※債務名義は取られていない)。

この手の事件を短い間に続けて受任しました。上の脅し文句は録音テープを起こしたものですが、監督官庁に問い合わせたところ、苦情や相談が多く寄せられているとの話でした。売る側・買う側とも登録業者で、しかも売る側は大手だったりするのが驚きです。

このように凄まれれば怖くない筈がありません。急の取立に困惑し、中には恐怖のあまり指定された口座に振り込んでしまった方もおられました。

次回に続けます。

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立場ごとの違い(下)

前々回からの続きです。

あらゆる状況を踏まえ、当初の方針通り「和解交渉」一本に絞ることにしました。

マンガならこうした場合、主人公が何かウルトラC、例えば、相手方の弱みを刑事ドラマさながらに暴き出し、「負けたぜ。もう、回収は諦めよう…。」で落ちがつくのでしょうが、実務がそう甘い筈がなく、ただ現実を見、手持ちの材料で対応するのみです。

仮に訴訟手続で対応するなら、仮差押には不服申立をし、訴訟で争う手段が「手続上は」存在します。が、時間と費用の無駄。お金を借りた事に間違いはなく、債権保全の必要性も明白ですから。第一、争う姿勢を見せた途端に和解の可能性は消滅します。

後は幾度となく、先方の担当者と話をしました。最初こそ「判決を取り、(売掛金に)強制執行します。交渉の継続は無意味ですよ。」と、全く硬い対応でしたが、それでも決裂だけは避けつつ話し合いを続けるうち、敵対関係にも関わらず何故か、ある種の人間関係(馴れ合うという意味ではなく)が形成され、次第に先方の態度が和らいできました。

結局、相互に着地点が見出せたので和解をし、仮差押と訴訟は取下げられたのですが、そこまでの過程で、先方が自発的に『もっといい話をしましょう。これ以後、利息は払わなくて結構ですよ。』と、当方の歩み寄りに応じる形で期待以上の譲歩をしてくれた事が印象に残っています。

和解書調印後の雑談の中で、(何故ここまでするのか?)という私の疑問も解消されました。資料からは見えない「感情面」での行き違いが随分とあったようで、貸し手・借り手という立場ごとの違いを「超える」紛争を解決することの困難さを知りました。

もし「目には目を」で応じていたら…、とつい思い返してしまう事案です。

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立場ごとの違い(中)

前回の続きです。

訴訟になれば不利とはいえ、ここで諦めて対応を終えてしまえば、一体、何のために受任したのか?という話になってしまいます。

そこで、裁判外で債権者と直接交渉することに決め、支払督促に対しては裁判所に異議の申立をしました。督促を受けてから2週間経過してしまうと、仮執行宣言が付され、強制執行される恐れが生じてしまうためです。この異議申立によって督促は失効。事件は正式に訴訟手続に移行し、初回期日が1ヶ月先に入りました。

こうして、いよいよ交渉に入ろうと思っていた矢先、ある意味一番危惧していたことが。

依頼者は事業主ですが、この大口取引先に対する売掛金(債権)が仮差押を受け、取引先から依頼者に対する支払いが凍結されてしまいました。仮にこの状態が続くと、事業収入が途絶えてしまい、訴訟をしている間に資金繰りがショートしてしまいます。

「訴訟の相手方の財産(売掛金)を仮に押さえておき、勝訴すればそこから回収する。」

いわば定石で、私が逆の立場でもそうするでしょう。

が、この場合に限っては、少しだけ違和感がありました。裁判所に仮差押命令を申請する場合、担保として、ある程度の金額を法務局で供託する必要があります。この供託金は後で取り戻せるにしても、一連の手続に費やすコストと請求額(保全したい額)を比較すると、費用対効果の面で、どこかアンバランスに思えたからです。

相手方のことながら(何故ここまでするのか?)と正直測りかねる部分でした。しかし、どんな事情があるにせよ、ますます状況が悪化したことだけは事実。

長くなってしまったので、次回で続けます-。

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立場ごとの違い(上)

忙しさにかまけて、2週間以上も更新を飛ばしてしまいました。日記のはずなのに…。

今日は、懸案だった貸金請求被告事件が一応の解決を見たので、やや一息。

この事件、ある事業者の方から任意整理を受任したのが始まりでしたが、私から債権者に対する受任通知発送と、その債権者から依頼者に対する支払督促申立が同じ日だったという、何とも笑えないスタートでした。双方が計らずも同時に刀を抜いた訳で、「事実は小説より奇なり」とは、よく言ったものです。

支払督促を受けるということは、訴訟提起されたのとほぼ同じ状態です。能動的に和解交渉を進めるべきところが一転、被告代理人として訴訟対応せざるを得なくなりました。

一般論を言えば、貸金請求の裁判は、被告(防御側)が圧倒的に不利です。貸金業者が証拠も持たず、また、回収の見込みも立てずに訴訟を選択する筈がありませんから…。

と、ここまで一気に書きましたが、まだ仕事が残っているので、続きは次回へ-。

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